常願寺川石工中川甚右衛門の代表作 その2
射水市加茂の海翁寺様境内には、ちょっと変わった石塔があります。
五輪塔(ごりんとう)の形をデフォルメした塔で、基壇には「法華石経塚」の刻銘があります。法華経文を書いた石を埋めた塚をつくり、その上に建てた供養塔です。経石は塔の箱形の基壇に納めたかもしれません。
五輪塔は、上から空輪・風輪・火輪・水輪・地輪と呼び、平安時代中国から伝来したといわれます。はじめ仏塔でしたが、次第に墓石の一つの形として定着しました。
甚右衛門の作った法華塔は、宝珠の下二つの部材にそれぞれ2体の仏様、その下の水輪形の丸い石に地蔵菩薩様の浮彫があります。上の4体の仏様は、多宝如来、釈迦如来の並坐像、観音菩薩、無尽意菩薩は薬師八大菩薩のうち2つの仏様です。
この塔は、尾張国(今の愛知県西部)の常清密之仙というかたが、海翁寺7世住職代に建てたもので、146人もの戒名が刻んであります。亡くなられた肉親なども含め、写経された方は生前戒名を記したのでしょう。塚は今はありません。
これとそっくりな石塔が富山市内五番町の光厳寺様境内墓地の中にあります。石の順序が違ったり、違う石材を加えたりして原形がわからなくなっていますが、もとは海翁寺の形に近いものでしょう。元富山藩重臣の家柄の墓石です。海翁寺と同じ頃の甚右衛門の作でしょう。
これら2つきりですが、ほかにご存知の方はご一報くださいね。
海翁寺様の法華塔(文化3年)
水輪におられる地蔵菩薩様
五番町光厳寺墓地 富山藩重臣の家の墓石
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