立山山麓の近世石造物【甚蔵】その4
北野甚蔵は、芦峅寺にある手水鉢(ちょうずばち)の製作も手掛けました。2つが見つかっており、いずれも龍淵上人が発注されたものです。
閻魔堂参道入口のお不動様の前にある手水鉢は、龍淵上人の師 淡路国願海寺の龍成上人の菩提、父母の菩提を弔ってつくったもの。甚蔵の石工銘があります。
宿坊教算坊庭園の手水鉢は、側面に「漱」と大きく一字彫ってあります。これは「くちすすぐ」という字で、うがいをするといった意味です。この手水鉢には「竜淵逆修」と彫られています。逆修とは、生前に自分の供養のための仏事を行うことです。庭園の一部となっていますが、元来何かの前に置かれていたものでしょう。もしかしたら閻魔堂の阿字観碑の前だったかもしれません。これには石工銘はありませんが、閻魔堂の手水鉢の「竜淵」と同じ字であることから、甚蔵の作とみられます。
いずれも文政7年(18)頃の作と推定されます。
丸い水鉢に張られた水は、まるで鏡のようです。
閻魔堂入口のお不動様前の手水鉢
上の実測図
教算坊庭園の手水鉢
上の実測図
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