宝篋印塔の話 その1
これまで紹介した宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、礼拝して拝めば、罪をなくしてくれるという、とてもありがたい塔だということはすでにお話しました。
密教系のお寺でお目にかかることが多いですが、常願寺川石工が活躍した地域では、お寺のほか、有力な庄屋様が、自分の家の墓地に置きました。ほかの地域では見られない、珍しいことのようです。
さて、このありがたい塔には、経文(たいがいは宝篋印陀羅尼経)や、造立した経緯などが彫られています。
四隅が突出した笠の下には、例外なく小さな四角の石があり、四面に文様のようなものが彫られています。この石が塔の本質を表す、大事な石なのです。
図はその拓影です。窓のように見える「花頭」形の彫り込みの中に、蓮華座に載った丸い「月輪(がちりん)」が浮彫りされ、月輪の中に梵字(ぼんじ サンスクリット語)の一文字が彫られます。
これは四つの仏をあらわしています。
これは、梵字ウンで、阿閦(あしゅく)如来様の事です。
これは、梵字キリークで、阿弥陀(あみだ)如来様の事です。
これは、梵字タラークで、宝生(ほうしょう)如来様の事です。
これは、梵字アクで、不空成就(ふくうじょうじゅ)如来様の事です。
これらの仏様は、それぞれ東西南北の方向をつかさどる仏様です。そしてその四面で囲まれた中央に、大日如来様がおられるということになります。
つまり塔の本体は大日如来様で、計五仏により金剛界曼荼羅(まんだら)世界をあらわしているわけです。いわば、立体的な曼荼羅ということになります。
だからこそ、お寺では大事にされているのです。
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