下呂石の話 その1
「下呂石」ってご存知ですか?
飛騨の下呂市の名前と同じなので分かりやすいのですが、下呂温泉のある下呂市内から産出する石の呼び名です。
下呂市街地の東にある湯ヶ峰(標高1067m)というところから産出する火山岩で、ガラス質の流紋岩です。下呂石というのは考古学上の石の名前です。
湯ヶ峰周辺の川では角礫として採集することができ、太平洋へ流れる木曽川では、下流で円い礫としても拾うことができます。
割ると鋭利な縁ができるので、この周辺の古代人は鋭利な石器の材料として使いました。縄文時代には弓矢の先につける石鏃(矢じり)や穴をあける石錐(いしきり)はこの石を多く使いました。
当時、長野などで産出する黒曜石が広範囲に使われていましたが、原産地から遠く、なかなか手に入らない石材だったようです。
この下呂石は、富山平野を中心とした、新潟から福井の日本海側に持ち込まれました。富山の縄文遺跡の石鏃には、下呂石がたくさんあることから、それが当たり前のことと、とりたてて深く研究することは少なかったのでした。
近年下呂石の広がりについて、飛騨の方々の熱心な研究が行われ、下呂石シンポジウムなどが開催されるなど、活気を呈してきました。
この流れで、北陸を中心とした日本海側への下呂石の動きの研究が必要になったきたのです。(続く)
縄文前期(5000年前)の石鏃(矢じり)と石錐(右上4点)。富山市内出土
(富山市埋蔵文化財センター展示図録から引用)
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